2012年1月21日土曜日

これで古典がよくわかる/橋本治

「オリジナリティー」という言葉は「自分の出てきたところ=オリジン」に
由来するという意味を持つ。自分が本来持っているはずの独自性・・・。
自分の足元にある日本の歴史や文化、古典・・・。
知っていますか?軽視してはいませんか?


2008年の8月に本屋さんで手に取ってからファンになった橋本治さん。
『桃尻語訳 枕草子』や『絵本 徒然草』をはじめ、色々と読ませて頂いた
作品のうちの一つがこの『これで古典がよくわかる』です。


この本、タイトルから想像すると、古典について分かりやすく内容を紹介する、
かのような印象を持ってしまいますが、まったくもって内容は違います。
古典の中身については、ほとんど紹介されていません。

それどころか、この本の最後では、
古典を読みこなすためには知識はいるんだけど、
知識を得ようとする前に、まずは古典に慣れなさい、と言っています。
そして、古典は身体で覚えるものだから、
古典の冒頭を ”暗唱” しなさいと進めます

ですから、結論を言うと、この本を読んでも
古典が読めるようにはなりません。


では、この本は読む価値がないのでしょうか?
僕は日本の高校生の古典の教科書はこれにすべき、
と思うほど面白く価値あるものだとおもいました。

著書もあとがきで述べていますが、著者はこの本を通して
「受験生用のわかりやすい日本文学史」を書きたかったんです。

そしてこの中身が非常に面白く、古典に対する
色々な謎解きをしてくれるものになっているんですね。

皆さんは、なぜ戦前の大日本帝国憲法が
漢字とカタカナで書かれているか説明がつきますか?

紀貫之が、男にも関わらず女のフリしてひらがなだけで
土佐日記を書かなければならなかった理由が説明できますか?

なぜ漢字を真名と呼び、ひらがなやカタカナを仮名と呼ぶか分かりますか?


僕が思うに、この本は、極めてやさしく分かりやすく日本文学や
日本語の変遷史、ひいては日本思想史のベースを解説してくれている希有な1冊です。

無文字社会だった日本がどのようにして言葉を作り出してきたのか。
その過程でどういう思想傾向のもとに、どういう文学的変遷をたどって
今に至るのか・・・日本人としてのオリジンを探る上でも知って損はない1冊。




2012年1月1日日曜日

2012年度、CATS観劇のはじまりはじまり



2012年1月1日・・・。
今年は元旦早々、奥様と一緒にミュージカル『CATS』を観てきました。

昨年のクリスマス観劇にて、ジェリクル小学校は卒業したつもりなので、
今日はジェリクル中学校の入学式のつもりで観劇してきました(笑)。
※ちなみにジェリクルというのはキャッツにでてくるネコたちのことで、
ジュエリーとミラクルを合わせた造語です。要はサイコ〜ってこと。


今日は元旦だし、それなりに空いているかな?
と思って劇場へ足を運んだ自分が馬鹿だった・・・と思うくらい
横浜のキヤノン・キャッツシアターには、愛すべきCATS馬鹿達が(笑)。
おそらくチケット完売だったのではないでしょうか。
見渡す限り空き席はなかったように感じました。

今日は、舞台向かって右手側のC席に陣取っての鑑賞でしたが、
周りには風邪で四六時中ゲホゲホしているオッサン、オバサンが大量に・・・。
正直、気が散ってしまうのでちょっと迷惑。
皆さん、体調管理はちゃんとやりましょうって感じ。
それに、舞台始まってから暫くして震度4(?)くらいの地震があり
席の周りは微妙にざわつく始末・・・。

見る側の状態がイケテないなかでのスタートでしたが、
そんな中でも今日の俳優さん達の演技は冴えまくっていました!!


今日は、僕が大好きな俳優さんが数名、
他の舞台から帰ってきてくれていたんですよねw。

マッチョフェリーズ役の松島さん。
※ほんとはミストフェリーズだけど、身体がムキムキだからねw
それから、ディミータ役の坂田さん。
そして、タンブルブルータス役の川野さん。

3人とも凄く素敵なジェリクルを演じられていましたが、
なかでもタンブル役の川野さんには魅せられました・・・。

地震の後で途切れてしまった観るための集中力。
これをあっという間に舞台に戻してくれたのが、
ジェリクル舞踏会での川野さんのダンス!!

奥さんとも同意見ですが、今日の川野さんのダンスは
マジでキレッ切れに斬れていた!!
ほんと、格好良すぎました。
川野さんのダンスってほんと凄い力を持っていますね。
先日までタンブルを演じられていた松永さんのダンスは
優雅で美しい流線的なダンスという印象ですが、
川野さんはどちらかというとキレと力強さに支えられた
突破力!!という印象です。

ほんとみていて気持ちがよかった。
今日のMVP一人目は川野さんですね。

MVP二人目は、やはり、マッチョフェリーズ松島さんかな(笑)。
3.11の震災後に初めて松島さん演じるミストを観て、
その歌唱力とダンスの表現力によって僕をキャッツ狂にした
二人の内の一人。過去30回以上キャッツを観ましたが、あの1回しか
松島さんのミストにはお目にかかれていなかった。
それが今日、お目にかかれたわけですので、感激もひとしお。
※松島さんには昨年のCrazy For Youのボビーで、かなりやられてたんですけどね。

MVP三人目は、なんといってもボンバル麗子様!!

僕をキャッツ狂にした張本人といっても過言ではないお方。
この方のダンスは、一挙手一投足がほんとうっとりするくらい
気品というなの哲学と美に溢れています。
ちょっとした仕草に哲学を垣間見せるって・・・これは日々の鍛錬のなかで、
「絶対的な美の追求」という姿勢を怠っていない証拠なんだろうと
勝手に推測しています。

僕がCATSの舞台に哲学を感じて、その豊穣な世界に対する探求を始めたのも
すべて西村さん演じるボンバルリーナを観たからこそ!!
だから僕にとってはボンバル麗子様なんだよね(笑)。
直接的な面識はありませんが、この方の存在には心から感謝しています。
感謝してもしつくせないくらいことを、そのパフォーマンスから教えて頂きました。
そして、年初めとなる今日も、ボンバル麗子様はボンバル麗子様だった・・・。

CATSの舞台はカーテンコール時にジェリクルたちが客席に降りてきてくれて、
客と握手をしてくれます。僕は、本当に感動した舞台の時だけ、
握手に来てくれるネコさん達に感謝の言葉を述べて握手するようにしています。
そして今日は、ボンバルリーナが握手を担当するC席・・・。

めでたく、ボンバルリーナに感謝の言葉を伝えることができました(笑)。
そしたら、お年玉のようにボンバルリーナからのお言葉が・・・。
頂いた言葉は、大事にとっておきたいと思います。

手前の席に座っていた奥さんも、
「やっぱり麗子様ってダンサーとしても人間としても素敵だね!
今日一番キャッツでよかったシーンじゃない!」とまで・・・。

ほんと、新年早々のCATSとしてはこれ以上望みようのないスタートでした。


ということで、ボンオタ(※)としての熱狂はここまで。
今日はCATSの舞台から改めて大事なことを教えられましたので、
残りはそのことについて・・・。
※嫁から頂戴したあまり嬉しくない名称:ボンバルリーナのオタクという意味


これまでのCATS鑑賞を通して、CATSの魅力が多様であることは
僕自身が感じてきたことです。
これまでの僕はその作品にグリザベラを中心とした
「自己の受容」と「その結果としての救済と再生」という物語を
多分に感じ取って、ひとり楽しんでいました。

しかし、今日の鑑賞においてはいつもとは違ったメッセージが飛び込んできました。
「自己の受容」と「その結果としての救済と再生」だけではなく、その先に
もっと深堀できるテーマがあるんじゃないか?といったものです。

飛び込んできたメッセージを念頭に置きながらグリザベラの昇天シーンと
その後にオールド・デュトロノミーが歌う「猫からのごあいさつ」を聴いて、
おぼろげながらに新しいテーマが言葉として浮かんできました。

上手く表現し辛いのですが、
「誰かと”今を生きている”という経験(=喜び)」
とでも呼べるようなものです。ちょっと長いですけど(苦笑)。

神話学者のジョゼフ・キャンベルは『神話の力』において、
こう言っています。

人々は、よくわれわれみんなが探し求めているのは
生きることの意味だ、と言いますね。でも、ほんとうに求めているのは
それではないでしょう。
人間がほんとうに求めているのは
<いま生きているという経験>だと私は思います。


僕は、昨年、この本を読んだ時に「なるほど」と思ったのですが、
自分が生きてきた33年を振り返った時に、まだちょっと言い足りていないな、
という印象をもっていました。

それが、今日のCATSの舞台を観た時に、
ふっと先の言葉として浮かび上がってきたんですね。

オールド・デュトロノミーはこう歌います。

いかがです、皆さん?
猫の生き方は、大いなる心もち、誇り高く、強く、生きているでしょう。
もうお分かりのはず。とても似ているあなたと、とても似ているあの人と、
とても似ている人間と・・・。
さぁ、猫にごあいさつを。
忘れてはいけない、猫は犬に在らず。


この詞のなかには明確に他者がいます。
語りかける相手がいます。対話をしています。
誇り高いジェリクルとジェリクルが共に生きる・・・。
その姿は人間もおなじでしょ?と
問いかけでもするかのように、諭してでもいるかのように・・・。


人は自分の意志で、自分の人生をあっけなく終了させることができます。
望まなくても、その人生を強制的に幕引きさせなければいけないこともあります。
色々大変なことがあるのが人生・・・それでも生きることは素晴らしい。
なぜに素晴らしいのか?

その問いと一つの回答がCATSの舞台から
贈られてくるような気がしてなりませんでした。

2012年のCATSはジェリクル中学生として、
CATSを観ながらこのテーマを探求していきたいと思います。

今年のキーワード「方法」と「文脈」

2012年も始まりました。

政治、経済含めて視界があまり好くない年かもしれませんが、
自分は自分でしっかりやるだけですね。

今年はこれからミュージカル『CATS』詣でに行きますが、
その前に一つエントリーを。ということで、今年のテーマとなる
キーワードっぽいもの。

「方法」と「文脈」でしょうかね。

昨年最後に竹田さんの現象学についてのエントリーをしてみて
改めて感じましたが、私たちのものの見方というのは
ほんと断片ばかりだなー、と。

今朝読んでいた本に、丸山眞男さんの
『日本の思想』のレビューが載っていましたが、
このレビューを読んで、意を新たにした次第です。

丸山さん曰く・・・。
日本には西欧のインテレクチュアル・ヒストリーの伝統がないため、
日本人は自分達の思想がこれまで辿ってきた変遷の過程を
体系的・歴史的に再構成するのが全然できていない、と。
そのため、西欧の思想を輸入するにあたっても、その思想が形成された
歴史的文脈を無視して、自分に理解しやすいところだけつまみ食い的に
取り入れる傾向があった、と。

夏目漱石も似たようなこと書いていますけど、
個人的に昨年の出来事を振り返った時に、全くその通りだなと
あらためて痛感しました。

混迷の時代こそリーダーシップ!!とかイノベーション!!
なんていわれますけど、その実態は、時代や状況に立ち向かった人たちが
己の問題意識やセンスをもとにこれまでとは違う方法をもって
挑戦してきた歴史につきるんじゃないかなという思いが僕にはありました。

そういう意味で、自分の視界を開くという意味を込めて、
今年のキーワードを「方法」と「文脈」にした次第です。

このキーワードを常に頭の片隅に起きながら、
仕事や読書、そしてCATSの世界を探索して行きたいと思う年初めでした。

それでは皆様、今年もよろしくお願いいたします。