2011年12月10日土曜日

台所の一万年 〜食べる営みの歴史と未来〜/山口昌伴

大分前に読んでメモしていた本のメモがヒョッコリでてきたので
ここに転記しておきます。


試み:日本列島に繰り広げられてきた一万年にわたる
食べる営みの場所と道具・装備の変遷を大づかみに捉える


著者の問題意識
①なぜ今、こんなキッチンでこんな食べ方をするようになったのか
経緯を確かめたい

②21世紀の100年もこんな食べ方でいいのか
・今時の食べ方は体に良いわけないし、美味しくもない
・収穫した食べ物を無駄にしている
・家庭の台所のあり方にも問題があるのではないか
→食べ方の理想を「食べる営み」の装備や道具立ての方から見直したい

◆目次

第一章 食べ事とは、食べ物とは、そして台所とは
大事に食べていくために
美味しい健康、食べる楽しみ
生命と食事
食べ残しのゆくえ

第二章 台所のいろいろなかたち
台所の成り立ちを探る小旅行
うちの台所、まちの台所
住まい全体が台所
食べられる都市

第三章 近代日本の台所に起こった事
食べる営みのシステム
台所、この100年

第四章 これからの台所、その設計条件
美味しい台所を実現するには
「台所の構え」をもっと自由に
食べ事を大事にできる台所


◆気になったところ、フレーズなど

「じつは、人類が文明の段階に入った一万年ほど前からこっち、人類は自然のままでは
食べていけなくなっているのです。この状態を絶対飢饉といってみましょう。
絶対飢饉に対して、牧畜や農耕など、食べ物である生命体を増殖するという
文明の力をはたらかせて、あやうく自然界と人間界とのバランスを保って、
何とか食べつづけてきたのです。」

人間は食べるための文明を作り上げる事で、今日の繁栄を享受するにいたった。
a)人口の増大が可能になった
b)健康で長生きになった
c)食べる事が楽しみや生き甲斐になった


「人間の生命を支えつづけてくれるものー食べ物とはいったい何なのか。
それは生命の屍体なんです。」

「人類の食べる工夫の知恵の体系が、台所仕事と調理道具を中心に
しぼり出されてきたのも、ひとえに人類の食べ物が屍体であるということの
やっかいさのうみ出したことだったのです。」

「生活習慣病は生活習慣の集計結果なので、取り返しがききません。
生き方は食べ方なんですね。」

・ばっかり食い
・乱れ食い
・おかまいなし食い
などの見境のない食べ方ができるのが現代。
正しい食事がし辛くなっている。

「日本では、ことに食肉の風景には食の野性味が消去されてしまって、
獣の原型からは遥かに遠い。食材が生命体の原形から遠くなるほど、
人間に受け継がれてきている「動物の本源」としてのぎらぎらした食欲が薄れてくる。
食材が生命実感を失って、記号化された食品になってしまうのと、
それを扱うことで済むキッチンのあり方とは同時進行してきたのです。
人間の本源的食欲、健康な食欲を喚起し、かつそれを満たすことのできる
食べる営みの支えを、私はキッチンに対して台所と呼び分けたいのです。」

お刺身を食べる。残りの魚の頭を二つに割ったのを使って、おすましをつくる。
内蔵はアラ煮に、頭はうしお汁に、骨は味付けをして、乾かして粉にしてフリカケに。

遊牧民は動物を解体して頭のてっぺんから足の先まで食べてしまう。
どうしても食べられない部分はヴァイオリンの弦になったり、
太鼓にはったり、筆になったりと工夫をして全て使っていた。

食べ物とは生命体である故に、一斉に実ったり、成長と繁殖があったりする。
人間は喰い溜めに限界があるので、「食い延ばしの工夫」が食文明の基本技術となった。

食文明における食い延ばしの技術として

Ⅰ.食い溜め

Ⅱ.生き物のコントロール術
a)計画的に食べる
・大きくしてから食べる
・絶滅しないように食べる
・計画的に生産する

b)生きたままの保存術
・籾をつけたまま保存
・生かして保存
・半殺し保存

Ⅲ.保存加工術
a)脱水・乾燥
・風で乾かす
・煮て干す
・燻製
・結氷脱水
b)封じ込み
・密封保存
・漬け物類
c)殺菌
・加熱殺菌
・薬効消毒
d)発酵

Ⅳ.雰囲気調整保存術
a)生命維持環境に留意
・土中
・冷蔭所
・冷暗所
b)人工雰囲気調整保存
・冷蔵
・氷蔵
・冷凍
・CA貯蔵


「食料の加工調製から食料の食品化、生命の砦としての食料の備蓄の確保、
食い延ばしのための保存食加工ー経済性を高め、栄養を増やす工夫、調理と配膳の
作業を繰り広げる清浄な板の間という広い作業面、そして裏庭にみる食料自給と
リサイクルの体制。この、住居にしつらえられた完きシステムから、近代になって
いろいろのものが外部へ、社会へと押し出されていった。その残りが、今どきの
キッチンなのです。」


・食べ物の入手+調理+料理=台所システム

■台所というシステム
以下の4つが合理的に組み合わされた、
一つの食べる仕組みを支える空間と装備を台所という。
①食べ物の入手の仕組み
②調理の仕組み
③分配と共食の仕組み
④料理の仕組み


「家に帰っても冷蔵庫の都合が優先。冷蔵庫の都合というのは、
賞味期限の切れそうなものから食べていくということで、
冷蔵庫は新鮮で美味しい食べ物を不味くしてから食べる機械であるということに
なってしまっています。どうも美味しいことへのこだわりは、まだまだ食生活の
中心的なテーマとして身についてはいないようです。」


「日本列島は季節の変化に富んでいる。その季節によって手に入る食べ物が違う。
それぞれの食べ物にそれぞれの季節があって、まっ盛りのときを旬といいますね。
食べ物の成長のリズムにあった旬のときに、味がもっとも充実している。
旬のものは安くて美味しい。それが大地の健康をも支えていくのです。
そして、旬の食べ物にはその季節にあった食器、春は若草や春の花の模様、
夏はガラス器や白磁、秋は秋草の模様、冬は厚手の陶器といったふうに
四季折々を楽しんだのです。」

「能率的なキッチン、美しいキッチン、片付くキッチン、サッとひと拭き、
掃除のしやすいキッチン、この四条件で今どきのキッチンの基本設計は
できあがっているのです。ここに欠落しているのは、美味しい料理ができることです。」

「台所は片付いちゃったらダメじゃないですか?
日本の近代化のモデルとされたのは西欧のライフスタイル。キッチンもそうです。
でも西欧のキッチンと日本の台所は、ちがう原理で働いているのです。」

◆著者の論点
加工された食品からスタートするのが西欧スタイル。
食材からスタートするのが日本スタイル。
西欧スタイルの根底にあるのは必要悪としての家事労働。
極力軽減すべき労働としての家事を減らす支援をするものとして
キッチンはデザインされている。

生活の中心は食べ事であるにもかかわらず、建築家のほとんどは
住生活から食べ事を切り離して、キッチンというスペースに押し込んでしまっている。


日本は食べる営みの場所をもともとは台所(だいどこ)と呼んできた。
※平安時代の宮殿にあった台盤所(だいばんどころ)が語源とされている。

◆よい台所とは

大事なことは何よりもまず「美味しい台所」であること。
つまり美味しい料理が作れる場所があること。

美味しい台所であるためには、台所の構えを
食べ事のシーンに応じて臨機応変に変えることが出来るようにする必要がある。

著者の不満
・キッチンの設計には食材の収納システムがほとんど考えられていない。
冷凍冷蔵庫が置けるスペースだけしか配慮されていない。

→食材を大事にする台所設計は、食材の収納システムを住まい全体の中で
体系的に考えることからやり直していくべき。


【個人的な備忘】
・マンションのキッチンってなんでこんなにせまいんだろ
2人が並んで分担作業するのが精一杯な広さ

・今のキッチンの広さだと、冷蔵庫に入らない食材加工品を
置く場所がとれない

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