2009年9月13日日曜日

性と暴力のアメリカ/鈴木透

アメリカを見るときの補助線としては何がうってつけだろうか?
おそらくそれは「政治」と「経済」と「宗教」、3つの視座だろう。
この本は、上記のうちの「政治」と「宗教(思想)」の切り口で
アメリカを読み解く視点を提供してくれている。
おそらくアメリカを知るときの基本文献としてうってつけではないだろうか・・・。



保守主義のアメリカ、共和制のアメリカ、
禁欲主義のアメリカ、性革命のアメリカ、
フロンティア精神のアメリカ、自由のアメリカ、
軍事大国のアメリカ、小さな政府のアメリカ、
銃社会のアメリカ、学問のアメリカ、
人種差別のアメリカ、同性愛のアメリカ・・・

とまぁ、いろんなアメリカがあります。

ややもすると歴史というものは、時系列に発生した
様々な事象(イベント)の連鎖でしかないように見えます。
特に、ニュースなどをとおしてしか触れることのない外国事情などというのは、
いまいち実感がわかず、知的な基軸を作って多角的に分析していくなんてことは
一切せずに終わってしまうのが普通です。

ま、相手国たいして重要な位置づけでもない国であれば、
そういうことでもいいかもしれませんが、相手が日本の命運を左右しかねない国、
世界の全ての国が注目する国だとしたらどうでしょうか?
そうです。相手はあのアメリカです。

私は個人的に、日本人はアメリカという国の歴史、特に思想的な国の成り立ちを
徹底的に知っておくべきだと思っています。

「俺はアメリカと政治交渉するわけでもないから別に知らなくてもいいや」という考えもあるかと思いますが、
私はこの考えに与しません。

大学時代にある国際ビジネスの舞台を飛び回っている方から直接聞いたお話が
今でも頭から離れないからです。

世界は国籍不明のコスモポリタンを相手にしてくれるほど甘くはないよ」という言葉です。
要は自分たちの出自や相手の出自をきちんと把握もせず、頭だけ勝手に世界市民になって
英語が話せるからと日本を飛び出してみても、世界のビジネスの要人たちからは
影で馬鹿にされるだけだ、ということです。

政治に関わる関わらない関係なしに、社会人の必須知識として
アメリカという国の歴史や思想基盤は知っておきましょうね。
※私もほとんど偉そうなこといってる割には何も知りませんのでコツコツ勉強中なんです・・・。


◆目次

はしがき
序論 「処女地」の凌辱

第一部 「性と暴力の特異国」の成立 植民地時代~1960年代

第一章 「性の特異国」の軌跡
    1.「完全なる性関係」を求める社会
    2.性道徳の法制化
    3.性への恐怖
    4.「性革命」と女性解放

第二章 「暴力の特異国」への道
    1.「小さな政府」とフロンティア神話
    2.リンチの系譜
    3.マフィアとFBI
    4.米軍の海外展開と「軍事社会」の出現

第二部 現代アメリカの苦悩 1970年代~

第三章 「性革命」が生んだ波紋
    1.同性愛者の人権
    2.妊娠中絶論争
    3.異人種間の性関係

第四章 悪循環に陥ったアメリカ社会
    1.銃社会の迷宮
    2.子どもへの性的虐待と死刑執行
    3.巧妙につくられる「環境差別」

第五章 「暴力の特異国」と国際社会
    1.リンチ型戦争の時代
    2.原爆論争とテロの記憶
    3.アメリカと世界の責任

あとがき
参考文献
関連年表

以上、合計264ページで構成されています。



◆本書の目的

著者の鈴木さんは、本書の目的を以下のとおり2つあげています。


第一の目的は、アメリカにおける性や暴力をめぐる問題の歴史的、法的、
政治的、社会的、文化的側面を総合的に検証しながら、
性や暴力がアメリカという国が抱える根源的な課題を如実に反映している様子を
浮き彫りにすることにある。

第二の目的は、同性愛や妊娠中絶論争、銃規制や原爆論争など、
現代アメリカが直面する性や暴力をめぐる諸問題の奥行きと広がりを
鮮明にとらえることにある。


と述べられています。


◆アメリカ解読の切り口として・・・性と暴力とアメリカの大地(アメリカ史の精神分析)

この本を読んでいて、面白かった点の一つが
アメリカ史の精神分析の手がかりです。

著者はアメリカ文学研究者であるアネット・コロドニーの研究を紹介しているのですが、
これが面白い!!ちょっと唸りました。

彼女は、性と暴力とアメリカの大地という三者を結びつけるような思考が、
植民地時代から形成されてきたことを示唆し、
いわばアメリカ史の精神分析というべき議論を展開する。
それは、男性の性的欲望がアメリカの歩みに投影されているという刺激的な解釈である。
なんでも、このコロドニーさんの研究によると、アメリカの文献に特徴的なのは
一般的に「母」として捉えられる大地が、アメリカの場合は「処女」になぞらえられる傾向にあるんだそうです。
アメリカの開拓者たちは、未開の自然を、男性が処女を暴力的に征服・支配するというアナロジーに
見立てて表現することが多かったんだとか。

アメリカの大地そのものが、実は女性化された存在であって、
それを暴力的に征服していく営みこそ、アメリカの軌跡そのものだった
というのがコロドニーさんの結論のようです。

ではなぜ、アメリカはこのような軌跡を歩まなければならなかったんでしょう?
どうです、興味わいてきませんか?

続きは、本書を読んでのお楽しみです。
読んで損はしない一冊ですから、是非読んでください。
※中公新書ですから、本屋にいけば置いてあるかもしれません。初版は2006年9月25日です。



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