2009年4月7日火曜日

白の闇/ジョゼ・サラマーゴ

昨年11月に映画館で上映されていた作品に『ブラインドネス』という映画があります。
ストーリーに非常に興味があったので、映画館で観たいと思っていたのですが、
都合がつかず見逃していた作品です。

DVDになる前に原作でも読んでおこうか、とおもって購入したのが今回紹介する
ジョゼ・サラマーゴ著の『白の闇』です。著者はポルトガル人でノーベル文学賞の受賞者とのこと。
ちなみに、ポルトガル語による原題は『見えないことについての考察』だそうです。

作品自体は、現代社会の本質を浮き彫りにするような寓話的な話です。
この作品を読むと、我々が日々接しているシステムの本質が
一体どのようなものなのかが浮き上がってきます。

よくよく考えてみると、私たちは身の回りの現実を知るための情報を数多く持っているにもかかわらず、
その本質を一切見理解してはいないのではないでしょうか?

この作品では、世界中の人々が次々と失明していきます。
これまで見えていたものが、一切見えなくなるため社会は大混乱に陥ります。
始まりは車を運転していた男性。次がその男性を家まで送っていってあげたこそ泥。
男性が診察してもらった病院の関係者と、徐々に徐々に失明が感染していきます。

国は感染を最小限に抑えるべく、失明した人たちを精神病院に隔離します。
1日数回、食料の補給だけが行われる隔離された環境の中で、視力を奪われた人間たちは
どのような行動を起こすのか。

見えることが前提に作られている様々なシステムのなかに、見えない人たちが放り込まれたら
一体我々はどのように生活していけるのでしょうか?
視力に問題があるからと言って、人間の本質は変わるのでしょうか?

そこには、人間の集団が持つ「愛情」「勇気」「協力」といったポジティブな力のほかに
「権力」「支配」「欲望」といったネガティブな力が加わり地獄絵図のような世界が展開されます。

このあたり、著者は上手ですね。
寓話として、一般的に考えると起こり得ないシチュエーションを想定することで
我々が生きるにあたって所与として考えている環境や状況を浮き彫りにするわけですから。

ありえない状況を要請することにより、今我々の身の回りで起こっていることの
本質を浮かび上がらせるというのは小説にしかできないことですね。

久しぶりに小説というスタイルの持つパワーを感じることが出来た作品でした。

ちなみに、昨日、この作品を映画化した『ブラインドネス』を観ました。
原作を忠実に映画化した佳作だと思いました。

小説自体は本当に読むのが好きな人意外はお勧めしません。
文体が説明、会話、その他に分かれていなくて読みにくいです。
興味がある方はDVDを観れば十分です。

それから、本作のような小説のパワーを感じたい人は、
以下の作品もチェックしてみてはいかがでしょうか。













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