2009年3月29日日曜日

三教指帰/空海

最近、”日本という方法を辿る”という自分のテーマのもと、
日本の歴史や思想史に影響を残した人物の本を少しずつ読み始めています。

私自身、日本を研究する人間でもありませんので、読むといってももっぱら
古典の口語訳なわけですが、それでもそれなりに書物が書かれた時代の
歴史を調べながら読んでいくと色々と発見があるものです。

古典を読むにあたって、最近私が気に入っているのが
角川ソフィア文庫に入っている古典シリーズです。
特に「ビギナーズ日本の思想」や「ビギナーズ・クラシックス」、「ビギナーズ中国の古典」シリーズは
私のような基礎教養の低い人間が読んでも分かるくらいよく出来ています。

今回読んだのもビギナーズシリーズに入っている『三教指帰』です。

『三教指帰』という書物は空海が24歳の時に記したといわれる『聾瞽指帰(ろうこしき)』が元になっているそうです。
24歳の時にこの本の基本的な部分をすべて書き上げ、入唐の際に中国へ持参し、
本場の学者たちの絵師絵を参考にして、内容のいくつかを改めて『三教指帰』となったのだそうです。

空海が生きた時代は西暦774~835年です。平安時代です。
インターネットはおろか、まだ印刷技術すらなかった時代です。
そんな時代に、たかが24歳足らずで、儒教、道教、仏教のエッセンスと比較・検討し、
仏教が以下に優れているかを日本最古の戯曲形式で書き上げたのですから、その凄さといったらありません。
私はこの本を読んで、空海に対する興味が一気にわいて来ました。

空海は、序文において『三教指帰』を書いた理由をこう語っています。

唯、憤懣の逸気を写せり。誰れか他家の披覧を望まん。
唯、自分のほどばしる思いを書きなぐっただけで、
別に誰かに読ませようとした本ではない、と言ってるわけですね。
一体何が、空海にこのような言葉を吐かせる原因となったのでしょう?

この本には、付録として空海の略歴が付されているのですが、
それによると空海の両親は学者だったそうで、特に空海の伯父さんは
親王の教育係をつとめた高名な儒学者だったそうです。
よって、空海は小さい頃から漢学を学び、十五歳で上京してからは
この伯父さんから熱心に漢学を学びました。
成績も優秀だったらくし、18歳で当時の官吏養成機関の最高峰である
大学寮に入学して徹底的に勉強するわけです。
いわゆるスーパーエリート街道まっしぐらなキャリアを送ってきたわけです。

ですが、そこで学べたことは基本的に訓古が主で、
その学風も、家名を掲げ富貴栄達を目的とする処世術の様相が強かったようです。
そんな学問は、人生の真の理想を追求したいと考える空海には馬鹿馬鹿しく思え、
結局は大学中退となります(なんか今の学生と似てるかもしれませんね)。

大学を中退してからは、自分の理想を追求すべく、
儒教や道教の本質を捉えなおしてみたり、
仏教を熱心に勉強していたようです。
大学を辞め、仏教を勉強するに当たっては、親戚や友人たちから
忠孝の道を外れる、などの理由で猛反対されたみたいで、
仏道と忠孝の道が相反するのかどうか真剣になやんだようです。

そしてやってきた24歳。
自分がこれまで属してきた富貴栄達の世界との決別と
仏道の歩みが忠孝に背くわけではないということの証明という
2つの動機をもとに『三教指帰』を書き上げるわけです。
この本、いわば空海のマニフェストなわけですね。
この思いが先の序文に秘められた空海の思いというわけです。

さて、この本のあらすじを簡単に紹介すると、こんな感じです。
兎角公(とかくこう)という人物がいて、彼には荒くれモノの甥、蛭牙公子(しつがこうし)がいます。
この甥を何とか更正させようと、儒学の先生、道教の先生、仏教の修行者が
順番にその教えを説き、最後には仏教が一番優れていることをその場に集まった全員がさとり、
心を入れ替えるというお話です。

要は儒教よりも道教よりも、いちばん仏教が素晴らしいんだぞ!!という宣言物語なわけです。
こういったお話が、先にも述べたとおり戯曲形式で進んでいきます。
今の我々が読んでも結構面白いお話だと思います。


最後に、この本を読んでいて一転気になった点を記しておきます。
私が持っている日本史の本には、飛鳥時代から聖徳太子の働きなどもあり
日本は仏教を重宝するようになったとあります。鎮護国家の思想として仏教が取り入れられたはずです。
仏教は国家的にも一番重要な教えとされたわけではなかったのでしょうか?

三教指帰には仏教と比較される宗教として儒教と道教があげられています。
儒教は孔子の思想であり道教は老子・荘子の思想をベースとした宗教です。
一体この儒教と道教はいつ日本に流れ込んできた思想なのでしょうか?
特に道教。あまり日本史の本には記載がないですが、
平安時代に空海が攻撃する対象として取り上げているくらいですから
巷では有力な宗教だったったのでしょう。
道教って一体何なんだ?

なんかの本で、「神道のルーツは道教だ」っていう主張を読んだことがあるけど、本当だったのか?
知れば知るほど分からないことがでてくる・・・。

日本人にもかかわらず日本の歴史に精通できていない自分・・・もっと勉強しないと。


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