2008年7月21日月曜日

書評『あたらしい戦略の教科書』 酒井穣著をよんで


以前、『はじめての課長の教科書』という本を読み、ブログに書評を書いたところ、ご丁寧に著者の酒井さんからコメントを頂戴した。個人的な意見とはいえ、結構言いたい放題の感想に丁寧に答えていただいたことに心を動かされ、この人の次の著も必ず買おうと決めていた。というわけで、今回、酒井さんの2作目を購入した次第です。

前回の著作についてのブログはこちら


前回は主観的な評価ということで、自分と本との関係についてのみを論じましたが、今回はこの本の読み手への教育的観点と、前回同様の私との観点との2つの視点で考えをまとめて見たいと思います。




まずはじめに、本書の構成についてですが、
目次は以下のとおりとなっています。

第一章:戦略とは何か?
1.戦略とは「旅行の計画」である
2.大学受験の戦略を考える
3.戦略は、時間とともに成長する
4.戦略における完ぺき主義のワナ
5.戦略は中心メンバーの選出から始まる

第二章:現在地を把握する-情報収集と分析の手法
1.情報力が戦略を簡単にする
2.集めるべき情報・行うべき分析とは何か?
3.顧客情報こそキングである
4.情報収集の3つのステップ
5.情報収集の現実
6.情報分析の基本

第三章:目的地を決定する-目標設定の方法
1.目標は何のためにあるのか?
2.目標設定の怖さを理解する
3.戦略立案を刺激する優れた目標・5つの条件

第四章:ルートを選定する-戦略立案の方法
1.戦略は本当に必要なのか?
2スイート・スポットをシェアし、戦略を育てる
3.新しいアイデアが本当に求められるとき
4.クイック・ウィンのテスト・ケースを走らせる
5.立案される戦略の構造
6.やめるべきことを常に探す
7.リスク対策と代替案の準備を忘れずに
8.戦略のキャッチ・コピーを考える

第五章:戦略の実行を成功させる
1.人を説得するための方法論を知る
2.組織トップのコミットメントをマネジメントする
3.組織内で、危機感と希望を共有する
4.情熱の伝染を起こす
5.組織内に「やさしい空気」を作りだす
6.戦略の実行に反対する人々との戦い
7.戦略の実行に使えるノウハウ集


上記を見てもわかるように、構成は非常に整理されている。
中身についても酒井さんの主張に対して殆ど異はありません。
そういう意味で、前提知識ゼロでよめる教科書として、
社会人になったばかりの新人や2~3年目くらいの人たちには
教育効果もそれなりにあると思います。

日本企業に対して研修サービスを提供している会社で
研修を実施する場に何年もいる立場としては、
この教科書をつかって”若手のための戦略思考入門”などというコースを
実施したら、教材評価は8割がた「満足」と評価されるでしょう。

そういう意味で、よい教科書だと思います。

個人評価ではありますが、星印で
★★★★☆(4.5にしたいんだけど半分黒い星がでない(泣))
はあげれます。


こっから先は、私とこの本という、完全に主観的な関係について述べます。
他人がどのように思おうが「知ったことか!!」という内容です。

主観の評価だとね、この本の私への貢献度は
☆☆☆☆☆でゼロなんだよね。

前回の課長の教科書は、これまでに日本の書籍マーケットには存在しない観点での
著作ということで5点をつけましたが、今回のは0点です。

教科書だから、という理由を言ってしまえばそれまでですが、中身がつまらない・・・。
本当に申し訳ないが、昔どっかで読んだことあるような内容の焼き直しのようにしか思えないのです。
なんというのでしょうか、生々しさがない、訴えるのモノがないんです。
本書では敢えて、○○の戦略と謳ってない関係上、旅行の計画というメタファーで戦略が語られる。

私は、目次でこの表現を見た瞬間に、この本を読んだ自分の状態が容易に想像できました。
おそらくこの本を読んでも
「数ある下らない、○○勉強法の組織・仕事適用版くらいにしかならないだろうなぁ」と予想しました。
そしたら、見事なまでに予想が当ってしまいました。まったくもってつまらない本でした。

なんでつまんないのかなぁー、と言う理由をここ2,3日考えていたんですが、なんとなく
理由は以下の2つのようです。断っておきますが、あくまで私にとってつまらなかった理由です。

理由1
巻末付録にある参考書籍の9割程度を既読であるため。
先に記載しました、内容について「どっかで読んだことのある内容の焼き直し」のような
印象をうけたのは本書の議論の下敷きを既に知識として自分が持っているからなのではないか
というのが理由の1つです。

理由2
理由1よりも主観的にこっちの方が私にとって大事なんですが、
「なんでわざわざヨーロッパにまでいってMBAを取得し、ヨーロッパの企業に勤め、
会社まで立ち上げた酒井さんがこんな当たり前の教科書をかくんだよ!!
べつに酒井さんが書く必要ないじゃん?単になんでもいいから本を売りたいと
思ってるんなら別だけど・・・」という疑問があるせいです。


前著にしてもそうなんですが、私は酒井さんのほかの著者とは違う
異色な経歴に期待していたんです。
一般的にアメリカから見た日本、と言う視点でのビジネス書は多いが、
ヨーロッパからみた日本という視点でのビジネス書は少ない、
だったらこの著者はなにかしら文化的にも、ビジネス的にも
面白い視点を提供してくれるのではないかと。

主観的に得るものがないというのは、私のこの欲求に対して2冊の著書が
なんにも回答してくれなかったということなんだ。

酒井さん、日本のマーケットを担う人材を育てると言う観点で教科書を書くのは結構なんですが、
あなたしかもっていないバックグラウンドを活かして、もっと生々しい情報を伝えては頂けませんか?
それとも、とりたてて本にするような内容はないのでしょうか?

余談ですが・・・
当たり前のことしか書いてない教科書が、日本のマーケットにおいて
高評価を得ている現実を目の当たりにして私はガッカリしてます。
当たり前のことが書いてある本に「何度も読み返した」とかって書評されると
オメー阿呆か?と思ってしまう。

酒井さんの目から見た、日本の中間管理職って有能なんですか?
今度日本にいらっしゃるようですが、そこでお会いした読者のひとたちは
日本の企業を担えるような顔をしてましたか?

どこかでお教え願いないでしょうか?

3 件のコメント:

酒井穣 さんのコメント...

こんにちは。まずは本書のお買い上げ、ありがとうございました。また今回も、とても率直なご意見を頂戴しありがとうございます。非常に参考になります。

まず、僕が本書を執筆した背景に関しては、ブログで公開(http://nedwlt.exblog.jp/9161772/)しました。「あたりまえ」のことが大事なのに、世の中の議論はフレームワークやライフハックといった「空中戦」ばかりになってしまっているのではないかという危惧が、本書執筆のベースになっています。

おっしゃるとおり、本書の内容は「あたりまえ」のことかもしれません。しかし、戦略に関する「あたりまえ」のことを、これだけコンパクトにまとめた本は少ないと、僕としては考えています。

Intelligenceとは、フィルタリングのことでもありますから、いかに少ないページ数で本質を示すかにトライしたのです。そのトライに意味がないと言われてしまうのは、やはり率直に言って残念です。

すべて既存の食材を使ってはいても、新しい料理はできると思います。食材に珍しいものが入っていないからという理由で、料理の価値まで疑われてしまうと、学者ではないビジネス書の著者としては、相当苦しいと感じます。

僕にしか書けないことを書くべきだというご意見、ごもっともです。それをいつの日か、多くの人に読んでいただくためには・・・プロモーションの順序というものがあると考えています。

ご存知の通り、日本の出版業界は大変な不況であり、商業的な成功を無視して、自分の書きたいこと「だけ」を書けるような状況ではありません。自分の書きたいことを書いても、信頼して買っていただけるような状況が出来たときには、きっと納得していただけるものを書きたいと思います。

でも・・・こんなにも率直なご意見をいただけることが、とても嬉しいです。いつの日か、必ずご期待に答えたいと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

Hidehiro Takeda さんのコメント...

酒井様

いつもいつも変な書評にも関わらず、
丁寧にコメント頂き、本当にありがとうございます。


「Intelligenceとは、フィルタリングのことでもありますから、いかに少ないページ数で本質を示すかにトライしたのです。そのトライに意味がないと言われてしまうのは、やはり率直に言って残念です。

すべて既存の食材を使ってはいても、新しい料理はできると思います。食材に珍しいものが入っていないからという理由で、料理の価値まで疑われてしまうと、学者ではないビジネス書の著者としては、相当苦しいと感じます。」

ブログの前半にも記載したとおり、ページ数に対する情報の構成と内容は教科書として優れていると思っています。

ですので酒井様が記載された内容、取り組みそのものが世の中に対して無価値だなどとは思っておりません。私の文面がそのような印象を(勢いに任せて書いているのでそういう表現になっているのかもしれませんが)与えたのであれば、お詫び致します。

ただ、私が期待していた「酒井様が書く」もしくは「酒井様にしかかけないであろう」ビジネス書と内容が違ったという印象をもったまでです。


「ご存知の通り、日本の出版業界は大変な不況であり、商業的な成功を無視して、自分の書きたいこと「だけ」を書けるような状況ではありません。自分の書きたいことを書いても、信頼して買っていただけるような状況が出来たときには、きっと納得していただけるものを書きたいと思います。」

私は酒井様のよき読者ではないかもしれませんが、今後出版される著書はすべて購入します。これ、約束。

私が「さすが!!」とか「まいりました!!」と思えるような著作が出てくることを楽しみにしています。

これからもお体に気をつけて、ビジネス、そして著述活動を続けてください。それでは失礼致します。

酒井穣 さんのコメント...

お忙しいところ、お返事ありがとうございます。とても嬉しいです。

ご存知の通り、ネガティブなフィードバックを頂戴できる顧客を持つことこそが、企業を成長させます。当然ですが、著者にも同じことが言えます。

僕にしか書けない本、いつか必ず仕上げてみたいと思います。今後とも、よろしくお願いします。